でぶすけ

先週から金魚を飼いはじめた

 

根津神社の「つつじまつり」にいったら,金魚すくいがあったのだ.

金魚すくいはここ数年,心の奥底で消えそうになりながらも静かに燃えていた願望であった.

これは,やるしかないと300円.

挑戦してみたら,ほいほいととれてしまったのだ.

何をやっても人並かそれ以下な私だが,ここに才能があったかとちょっと不思議.

今まで挑戦してきたもっと高尚なもので才能を発揮したかったよ...

 

渡されたボールにほいほいと入れていく.

ボールは金魚でぎゅうぎゅうになって,ぴちぴち脱走する子も出る始末.

ようやくポイが破けて,(ずっとしゃがんでるの辛かった)数えれば28匹.

逃げた子たちの数は知らないけど,かなりとれてしまったのだ.

(30匹とれれば名人証がもらえたと聞いて,逃げた金魚をちょっと恨んだ)

 

そして4匹連れて帰ってきた.

4匹飼うならと大きな水槽も買ったのだ.

それが今では1匹.

 

簡単にとれても,飼うのは難しい.これが命か.

死んで水面に浮かぶ金魚は天国まで登りたかったのに水中より上に出られず,諦めを目に浮かべているようだった.死んだ魚の眼を知った.

やりきれない思いで手ですくう.

深夜に近所の公園にそっと埋める.

今,すくうなら,あのとき私がすくわなきゃ良かったと思ってしまう.

とても可愛そうなことをした.

 

残った一匹はすごく太った丸っこい金魚だ.

女の子な気もするが「でぶすけ!」って感じがしてならないので,でぶすけと呼んでいる.

金魚すくいのお兄さんに「そのデブを連れて帰りたい」とお願いして連れてきた子だ.

 

連れてきた時から他の子たちに比べて食欲がすごかった.

住む場所が変わって絶望してる他の金魚とは違い,でぶすけは最初から生きることに貪欲だったのかもしれない.

 

でぶすけは餌を入れても見向きもしないくせに,私が目をそらした数秒のうちに全部食べる.

ちょっとしか餌をあげないと,もっとよこせと水面で口をパクパクする.

2回目の餌でようやく満足して,パクパクもせず底でじっとしてる.

わたしが呼ぶと長い尾鰭をみせつけて,そっぽを向くのだ.愛想がない.

 

それでも,毎日でぶすけに会うのを楽しみに帰宅している私がいる.

今,でぶすけの方を見たら珍しく,こっちを向いてる

「なによ,わたしの悪口いってるの?」

でぶすけのせいで私の婚期が遅れていくのは確かだ.