わたしのすきなもの

大学生の時、初めて自分の部屋を持ち、自分の好きなもので部屋を飾ることの楽しさを覚えた。

 

海外に行った時には必ず鳥のモチーフの雑貨を買い、窓辺にはよくわからないモビール、テレビの近くには建物のミニチュアを並べた。

気に入った鉱物があればすぐに買ってしまったし、夏はマリンな置物をトイレに並べた。

 

2年前子供を産む時に、その生活をやめた。

妊娠し、市役所でもらった母子手帳に、「トイレットペーパーの芯を通るものは赤ちゃんの誤飲・窒息死に繋がるので手の届くところに置かないように。」と書かれていた。

大体の雑貨が綺麗にトイレットペーパーの芯を通った。

それならば、と小さな雑貨は全て捨て、子供のものも増えることを想定し、いろんなものを断捨離し、本当に捨てられない物を小箱に詰めて押し入れの一番奥にしまった。

 

それでも飾りたいものは高い棚の上に飾った。

が、子供が育つ中で、うっかり手が届いてしまったり、「見せて」と子供からギャン泣きでせがまれ、しぶしぶ見せた後に廊下にぶち投げられ壊される....などの事故を繰り返し、子育て期間中にもたくさんの自分の「好き」を捨てることになった。

 

今ふと部屋を見渡せば、アンパンマンのパズルのピース、おままごとの食材の片割れ、電車のおもちゃ、レール、子供のお世話用品が部屋の至る所に置かれている。毎日毎時間片付けても部屋は一向に片付かない。物は溢れているのに、そこに私の「好き」は無かった。

 

そうしていく中で、なにが好きか、好きだったかわからなくなった。

なーんにも心が動かなくなって、散らかった部屋に仰向けで寝転んだら、初ボーナスで買った照明が目についた。

あ、私の好きなもの、まだあった。

学生時代からずーーーっと憧れてた、アアルトの照明だ。数万円した。当時彼氏だった夫にも、「電気にそんなにお金出すの?」と言われたけど買った照明。

日常の中で当たり前になった照明。

子供が散らかしたアンパンマンと馴染んでいるかと思うと甚だ怪しいが、子供と暮らした部屋を彩る構成物になってるのが嬉しかった。

 

それから数日後、数年ぶりに雑貨屋さんに行き、敷物を一枚買った。

玄関に置いてみると、家がすごく明るくなった気がして、自分が好きなものがあるってこんなに鮮やかなんだな。と嬉しくなった。

 

子供との暮らしは、汚れと破壊との戦いの日々だ。

物を大切にする。。なんてのは、二の次三の次になる。思うようにいかないことの方が圧倒的に多く、自分がいつ何をするか決める裁量権はほぼ無い。

でもだからこそ、我慢なんてしないで好きな物に囲まれて、そんな空間で家族と過ごしていきたいな。と思った。

ミニマリストな部屋も好きだけど、子供と居れば、ほぼ叶わない。思うようにいかないインテリアだからこそ、自分の好きなエッセンスを家の中にたくさん持っておくことは、心を、人生を鮮やかに豊かにしてくれる気がしてきた。

 

また雑貨屋さんにいきたいな